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2016年5月

2016年5月29日 (日)

ご当地イワナ 秩父と武尊

 ご存じのとおり生息地によって多彩な表現を見せるイワナたち。

 関東にも、2系統の特徴的な表現を持った個体群が居ます。

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上: 秩父イワナ 27㎝ 4月23日

下: 武尊イワナ系 28.5㎝ 5月8日

 大きさも釣った時期も近いこの2匹。

 まずは秩父イワナ。

 荒川水系の源流域に生息する個体群で、人によってはその中からさらに2タイプに分ける場合もあります。 鮮やかなオレンジ色に染まる鰭と腹に、金色の肌、そして目がチカチカするほどの蛍光色を放つ橙斑と、ぼやけるようなごく淡い白斑が特徴です。 

 他地域産のイワナとの混血が進んだことで純粋な秩父イワナはめっきり少なくなったそうですが、幸い現在でも一部の渓では壊滅を免れています。 

 これが恐らく私が出会った中では最もネイティブに近い個体で、生で見ると他のイワナとは別物な印象を受けました。 薄暗い源流では異質にも感じる、まるで熱帯魚を思わせるようなハデさ。

 一方の武尊イワナ。

 こちらも、腹や鰭、体側の斑点に赤やオレンジを強く発色し、背鰭より前方の背中の白斑が薄くなるという特徴をもっています。 名前のとおり、群馬県の武尊山系に源を発する川に生息する個体群です。 

 しかし、武尊山は利根川支流のいろんな水系の水源になっており、どの水系のものを指して武尊イワナと呼ぶのか、はっきり分かりません。 あるところでは片品川水系と言われていたり、またあるところでは薄根川水系と言われていたり・・・。 名前的には武尊川が一番それっぽい気もする・・・。 それとも武尊山系のイワナなら全部を武尊イワナと呼ぶのか・・・。 

 したがって今回釣った個体は、残念ながら武尊イワナと言い切ることはできません。

 でも、異質な赤さを持った外見は、噂に聞く武尊イワナと重なるものがあります。

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 上:秩父イワナ

 下:武尊イワナ系

 

 比べてみると、秩父イワナのほうは爽やかで、武尊イワナのほうはより濃厚でエグい感じ。

 それぞれの系統の中でも個体差はあるでしょうし、撮影環境も違うので一概には言えませんけどね。 武尊イワナのほうなんかひどくピンボケしちゃってますし。

 ニッコウイワナにしてはあまりにも鮮やかなこの2系統のイワナは、面白いことにどちらもヤマトイワナに関わるエピソードを持っています。

 秩父イワナの色彩は、大昔に山を越えて放流されたヤマトイワナの形質が、長年をかけて固定化したものだという噂があります。 

 しかし、秩父の山一つ越えた先の笛吹川水系には、現在ヤマトイワナの生息地はないそうです。 あちらは逆に、秩父から運ばれたニッコウイワナと混血したのか、そもそも最初からヤマトは居なかったのか・・・ 

 さらに、昔はヤマトが居たとしても、生きたまま秩父まで魚を運べたのかなどの疑問もあり、この話は噂の域にとどまっているようです。

 

 武尊イワナは、遺伝子を調べたところヤマトイワナに近いDNA配列を持っていたとか。

 こちらこそ、ヤマトを放流したなんて考えにくい土地ですが、外見は確かにヤマトっぽい。

 そういえば、本来のヤマトイワナの生息地から遥か遠く離れた秋田の八幡平周辺にも、ヤマトみたいなイワナがいるそうです。

 そもそもイワナを、アメマス、ニッコウ、ヤマト、ゴギの4種に分けることを疑問視する説もあるくらいなので、一部のニッコウイワナが偶然ヤマトっぽい外見に進化しても不思議ではないと思います。 

 まあ私がいくら考えても、彼らの正体が何なのかなんて分かるわけがありませんが、色々と想像を巡らせるのは楽しいですね。

 イワナの世界、奥深いです。

 

 

2016年5月23日 (月)

春の大岩魚

 4月下旬。

 天気予報では一応曇りのち晴れのはず。 しかし夜明け前の奥秩父では、しっとりと包みこむような霧雨が地上を濡らしていました。

 道から覗いた川は少し増水している様子。 今日は、間違いなくイワナの活性は高い。

 それでも、雨の日の釣りはちょっと嫌いです。

 できれば濡れたくありませんし、危険回避のために、いつもより余計に集中力を割かなければなりません。 そして何より、移動がキツイ。 私は埼玉での生活では原付しか持っていないので、家から釣り場までの3時間近くの間、雨に打たれ続けることになります。 真夏でもない限り、本当に勘弁してほしいわけです。

 この日も出発した時は平気だったのに、秩父の市街地を抜けたあたりで徐々に路面が濡れはじめたのを見た時には、あ~あ、と溜め息が漏れました。

 

 でも、イヤな天気だったのは明け方の一時だけ。 車止めに着く頃には雨も上がり、雲の切れ間から青空が覗くくらいの天気になってくれました。

 とりあえず、雨に打たれる心配はなさそう。 しかもこのタイミングなら、雨の恩恵だけはちゃっかり受け取ることができるかもしれない・・・

 期待に胸が膨らみ、ここから先の徒歩の道のりも足取りは軽い。 そのおかげか、思っていたよりも早く目的の場所まで辿り着くことができました。

 水際に降り立つと、やはり少々増水している様子が伺えます。 それに伴って期待どおりイワナたちの活性も上がっているようで、最初のポイントでさっそく小さなイワナがルアーにじゃれついてきました。

 釣り上がりはじめてまもなく、これはいかにもといった雰囲気の釜が現れました。

 5gのスープンを投げ入れると、見た目以上に流れの圧が強く、あっという間に流されてしまいました。 これは、ルアー以外の釣りで攻めきるのは難しそう。 ならば魚も残っているはず。

 立ち位置を変え、今度はディープダイバーで打つ。 流れのぶつかる巨大な岩の下をえぐるイメージで探りを入れると、心地よい水の抵抗感がロッドを通して伝わってくる。 

 餌釣りの錘では突き破れない、厚く重い流れの下に隠された緩流帯。 ここには必ず居るはず。

 何投目だったか、回収しようと浮上させたルアーの後ろに、見慣れない大きさの影が迫っていました。

 慌ててルアーを水面から引き抜くと、それはそのまま少しの間そこに定位したあとで、再び深い釜の底へ消えていきました。

 でかい。 35、いや40あるか。

 この日はもともと、秩父イワナらしい魚に出会うことだけを考えて来たので、このサイズのイワナとの立ち合いなど想像もしていませんでした。

 でも今そこにいたのは、確かに大イワナ。

 ダム差しでもない、ましてや放流魚でもない、憧れていた純粋な山育ちのイワナ・・・

 突如降って湧いたチャンスに動揺しましたが、きっとこれは獲れる。

 朝方にぱらついた雨が、この魚にスイッチを入れてくれているはず。

 一度ルアーを見せているから、今度は遠くでがっちり喰ってくれるはず。

 そう信じて再びキャストを繰り返す。

 すると数投後。 のしかかるような重いアタリが伝わってきました。

 ぐわんぐわん、と、大きく揺さぶられるような手応えが竿越しに感じられる。 

 こういう手応えの時はバレにくい。 期待どおり、いい喰い方をしてくれたようです。 しかも水中には巻かれるような障害物もなく、戦況はこちらが圧倒的に有利。

 それなのに、想像以上の引きに怖じ気づいて、頭の中では、「バレないで、頼むから!」 なんて、へたれたお願いごとを繰り返し唱えていました。

 結局、状況の良さに助けられ、たいして危なげもなくランディングできましたが、心臓はバクバク。 たまたま勝ってしまっただけで、本来は格上の相手なのだから仕方ありません。

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 39.5㎝。

 惜しくも40には届きませんでしたが、立派な尺三寸の大イワナ。 これでも、奥秩父では貴重なサイズだと思います。

 背中に白く残った傷跡が、この環境で生き抜くことの厳しさを物語っているようでした。

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 鮮やかな色彩が特徴の秩父イワナも、高齢になると色がくすみ、斑点が消失する傾向にあるといわれています。 このイワナも何年も生きてきた個体なのでしょう。 5センチのミノーなど一呑みにできるほどの大きな口からも、長い年月をかけてじっくり育ったことが伺えます。

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 4月も最高の魚で締めくくることができました。

 それにしても今シーズンは出来すぎです。 憧れていた魚が、早くもこれで2本目。

 

 コツを掴んだのか、ただ単に運がいいだけか・・・。

 

 

 

2016年5月18日 (水)

レッドバンド&ブルーバック

 秩父イワナは有名ですが、秩父ヤマメってどうなんでしょうか。

 奥秩父で釣りをしていると、しばしば独特な体色を持った個体に出会うことがあります。

 その特徴とは、一つは体側が強めに赤やオレンジを帯びること。

 そしてもう一つが、背中が冷たさを含んだ淡い灰色をしていること。

 特に背中の色は本当に個性的で、中にはブルーバックとも呼べそうなものも存在します。

 私は、これは秩父特有の血統によるものなんじゃないかな、なんて期待を寄せています。 単なる保護色による発色とは違うのではないかと。

 よその地域にも似たような水の色や石の色をした川がありますが、そこで釣れるヤマメとは、やっぱり発色の仕方が違うんですよね。

 ちょうど先月の今頃、そんな個性的なヤマメを求めて、今シーズン初の秩父へと繰り出しました。

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 まず釣れたのは、オレンジが強く出たヤマメ。 秩父ではこういう鮮やかなヤマメがよく釣れます。 これも確かにいいヤマメですが、背中の色はごく普通。 ブルーバックではありませんでした。

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 魚影は濃くて、イワナ混じりでよく釣れます。 最大は9寸。

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 ヤマメの方はいまいちサイズが伸びませんが、この日は秩父ヤマメの特徴を持った個体(私が勝手にそう思っているヤマメ)が釣れればOK。

 例えばこんな・・・

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 これぞ秩父のレッドバンド&ブルーバック。 これを釣りに来たのです。 サイズもこの日のヤマメの中では唯一まともでした。

 やっぱり何度見ても、このタイプのヤマメは格別の美しさです。 この色合いが本当に、かつて秩父に存在したネイティブから受け継がれたものなら面白いのですが、実際はどうなんでしょう?

 とにかく、今の秩父には、こんな系統のヤマメが生息しています。

 

 

2016年5月10日 (火)

3月の〆

 春休みも終盤に差し掛かり、そろそろ帰省を終えて帰らなければならない。

 これでしばらく栃木の渓もおあずけになってしまうので、最後にもう1度行ってみることにしました。

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 日が出ているのに風は冷たく、心地よく釣りが出来る日はもう少し先かなといった感じ。

 そのせいかイワナたちの反応は渋い。

 あまり動きたがらない寝ぼけたイワナのために、ルアーを沈めてあげても、追いつけるようにゆっくり誘ってあげても、なかなか反応する様子を見せてくれません。

 単に活性が上がりきっていないだけではなく、魚影の薄さとプレッシャーも厳しい状況に拍車をかけている感じ。

 これはボウズもありえるぞと思っていたところで、深いプールを湛えた堰堤が現れました。

 しばらく浅いポイントが続いていたため、ここにはそれなりに魚がストックされているはず。 あとは、プレッシャーをかわせるかどうか・・・

 適当な場所にルアーを放ると、少し離れた筋からビュンと影が飛び出してきて、少し追尾した後にひったくるような衝撃を右手に感じました。 しかし、うまくフッキングせずに空振り。 

 ところが、このイワナは慌てる様子などまったくなく、悠々と元の流れへ引き返していきました。

 あれだけ強くアタるほどルアーを銜えておいてこの反応って・・・

 追い方にもスレた様子など微塵も感じられませんでした。

 もう1回投げたらまた喰いそうだなと思ったら、本当に喰ってしまいました。 いいサイズの魚を相手にしているというのに何とも緊張感のない駆け引きでしたが、たまにはこんなのもいいでしょう。

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 ネットに収まったのは、今年最初の尺イワナ。 

 小さな渓流でここまで育った個体でも、タイミング次第ではあんな無邪気な反応も見せてくれるんですね。

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 体はまだ濃いサビに覆われていました。 

 やっぱり目覚めたばかりだったんですかね。

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 ヤマメに続いて、イワナも尺超え。

 いいシーズンになってくれればいいと思っていましたが、期待以上のスタートが切れました。

 

 

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